コラム「修理解体新書」
第2回 文化財を修理する。その1

  • 2021年12月23日

昔の人々が文化財を大事に守って伝えてきたからこそ、現在私たちが目にすることが出来るわけですが、では、どのように守って来られたのでしょうか。

文化財を守るということを考えることは、どのように保存されてきたのかと言い換えることが出来るかと思います。その文化財にとって最適な環境(素材によって、最適な環境は異なりますが)におかれているかどうかは保存において大切な要素です。

また、文化財の取り扱いについても、文化財を守るための大切な要素です。文化財の取り扱いにおいて最も大切なのは、「文化財を扱うことで文化財を傷める危険性があるということを認識しておくこと」と思います。

ところが、いくら「環境」と「取り扱い」に気をつけていても、文化財は傷んでいきます。では、文化財が傷む理由は、他に何があるでしょうか。

私たちが住むこの国では、地震や水害といった自然災害や火災が過去に起こっていますが、そのような災害により文化財が傷むことが考えられます。また、傷んだ文化財を修理する過程で不適切な修理を施した結果、かえって文化財を傷つけることもあります。これらの損傷の原因のほとんどは外的な要因によるものです。

しかし、文化財が作られた素材によっては、年月が経つだけで弱っていってしまう「経年劣化」がおこります。紙や絹でできた文化財は、その典型例と言えるでしょう。

いずれにしても、傷んだ文化財を放置すると、文化財の消滅につながります。そのために、修理が必要となってくるのです。

過去に修理をされている文化財を目にするたびに、文化財を大切に伝えていくために、先人たちが大切に目をかけ、手を尽くしてくれていることの証であるということを強く意識させられます。


コラム「修理解体新書」 第1回 文化財が現在「ある」こと。